中村航 「リレキショ」
今日紹介するのは中村航さんのリレキショです。
主人公はお姉ちゃんにアドバイスを貰いながら履歴書を書く。完成した履歴書を眺め、物足りなさを感じた主人公は履歴書を真似てリレキショを書いた。翌日、書いた履歴書を持ってガソリンスタンドに面接に行った主人公は、そこで次の日から働く事になる。アルバイトとして採用された主人公は、昼は家ですごし、夜はガソリンスタンドで働く生活を送りながら、作ったリレキショに自分を近づけるため日々活動を行っていた。
ある日、ガソリンスタンドで働いていると、フルフェイスヘルメットを着けた女の子が原付きを押してガソリンスタンドへやってくる。女の子は八十二円分のガソリンを入れ、去り際に一通の手紙を主人公に渡して行ってしまう。主人公と女の子の不思議な夜のやり取りが始まった。
この作品、最初から最後まで主要人物の素性が何処かしら謎に満ちているところが特徴だといえます。主人公の過去が明らかにされないのに過去をチラつかせたり、お姉ちゃんとの関係も含みを持たせて表現していたりと、色々謎な作品です。
無理に謎にしていないで、さり気なくチラつかせて、さり気なく謎にしているところが旨いと思います。気になるからどんどんページを捲ってしまい、最終的に謎を残したままなんとなく終わってしまいました(笑)。
こういう文章の書き方って難しいと思うんですよね。一つ間違ったらどうしようもない作品になってしまうので、なかなか上手には書けないと思います。それが旨い具合に良いところを残しながら、絶妙なバランスで纏まっていたので、常に人物について想像しながらストーリーを読む事ができました。なので、キャラに愛着が湧いて終わっても想像を膨らませる事が楽しかったです。
それから、自分が良いなと思ったのは主人公が一番最初に作ったリレキショで、この作品のタイトルともなっている物です。これが謎に満ちた主人公を仮に形成させる役割を持っていると思う一方、実際自分もこういうものを作ってそれに近づけていく努力をしたほうが良いのでは?と思いました。
ハードカバー版の話になるのですが、カバーを取ると拍子が履歴書を模したデザインになっているのも遊び心があって面白かったです。
河出文庫から文庫版も発売されているので興味のある方は読んでみてください。KUJIRAでした。
- 今回紹介した本
タイトル | 「リレキショ」 |
著者 | 中村航 |
出版社 | 河出書房新社 | 発売日 | 2002年12月10日 | 価格 | 1300円(税別) |
ページ数 | 204ページ |